のちに1番隊の隊士たちが言う。
腕を血まみれにして、とどめを刺されそうになっているを見たとき
全身から殺気を噴き出した沖田の姿は
もうそれはスーパーサイヤ人のような凄いことになっていたという。
act 22
沖田の登場で、満面の笑みになっているであったが、出血は止まらない。
すかさず沖田が叫ぶ。
「山野!止血!」
「はいよ!」
山野がの元へ駆け寄り、刺さっている刀を抜いた。
傷口からドクドクと血が流れる。
脈を打つように大量に溢れるところをみると、やはり動脈をやられているみたいだ。
早く止血しなければ命にかかわる。
腕をきつく縛る布が必要だ。
「山野、これ使え!」
沖田は隊服のスカーフを山野に投げてよこした。
「でも、沖田さん…そのスカーフは…っ」
急激に血を失う状況と、沖田達が到着した安心感で、の意識は朦朧としてきている。
さっきまで雄弁に話していたのに、もう呂律が回らなくなってきている。
出血の量、速さが命にかかわることを示していた。
そのような状態の中、が反応したのは沖田の差し出したスカーフ。
隊服のスカーフは隊長の証。
名誉あるものだ。
そんな大切なスカーフで止血などしてはいけない。とは言いたいのだろう。
「別にいい。腐るほどあるから。山野、腕千切るぐらいキツく縛れィ。」
「了解でっす!」
「っっっいったぁ!!!!!山野さん!いたいいたいいたい!!!!」
「はいはい、死にたくなかったら我慢する!」
思いっきり縛る山野に、はたまらず悲鳴をあげた。
その状況を見て高杉は驚く。
(腕を刺しても声ひとつあげなかったヤツが、なぜ腕を縛るぐらいで悲鳴をあげる・・・?)
何一つ解せない女。
ますます興味が湧く。
その高杉の思考を読んだかのように沖田が高杉に向かって殺気を飛ばした。
その殺気で雨粒がパチパチとはじける。
すさまじい殺気だ。
それなのに沖田の表情は晴天の空のように爽やかな笑顔を浮かべている。
笑顔?しかし目が笑っていない。仮面のような笑顔。
「さァて、俺の大事なだーいじな可愛い部下をこんなにしてくれたお礼は弾いとねィ。」
カツカツ
高杉との距離を静かに詰める。革靴の踵の音が響いた。
「まずは、と同じ左腕を斬り落とす。そのあと足。耳を削いで、鼻を削いで、目を潰す。それから、」
沖田は刀を水平に上げて、高杉の心臓に標準を合わて言った。
「心臓を一突きであの世送りでィ。」
「「「「「「「「「「こっっっっえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええ!!!!!!」」」」」」」」」」
その場に居合わせた真選組すべての隊員が沖田総悟が味方でよかったと思った。
(沖田さん・・・わたしまだ腕、からだにくっついてます・・・。)
「ックク、ケーサツさんの言うことは怖いねぇ。」
高杉は長い指で雨にぬれて額に掛かった長い前髪を掻きあげた。
自分の得物は脇差一本だというのに、焦りを感じさせない。
この人数の真選組を一人で倒せるという自信があるのか、ただクレイジーなだけなのか。
沖田は眉を寄せる。
パラパラパラパラ
そこに、プロペラの羽ばたく大きな音が聞こえてきた。
ヘリコプターだ。
ヘリコプターからはロープのはしごが伸びている。
「晋助さまぁぁぁぁあ!迎えにきましたよぉぉぉおおお!!」
ミニの丈の着物を着た金髪の女が高杉を呼んでいる。
「ま、こういうことだ。」
にやっと笑う高杉に沖田も同じようにニヤっと笑った。
「は?逃げ切れると思ってるのかィ?」
確かに、高杉は沖田の間合いの中に入っている。
逃げる隙を沖田が与える訳が無い。
パラパラパラパラ
ヘリコプターがだんだん近づいてくる。
この際だ、イケ好かねェあの金髪の女も一緒に捕えるか。
沖田の刀を握る手に力が入る。
そのとき
ビュッ
と、高杉が脇差をめがけて投げた。
「しまっ・・・・」
予想外だ。
沖田がの方を振り返る。
と手当をしている山野めがけて一直線に脇差が飛んでいく。
山野だけなら避けることができる。が、それをしたら瀕死状態のに刺さってしまう。
山野はをかばうように覆いかぶさった。
「山野さん・・・!!!」
カキン
間一髪のところで山崎の投げたクナイで脇差は落とされた。
「ザキ!良くやった!」
「・・・ふぅ、山崎さん、助かったッス!」
「山野君に良いとこばかり取られてばかりじゃいけませんからねっ!」
山崎はイケメン山野くんを、ひそかにライバル視しているのだ。
「ははははは!!!さすが高杉さま!!!非道ですーーーー!!!!」
「うるせぇよ。」
沖田が気を取られた一瞬の隙に高杉はまた子のロープにつかまり空高く上がっていた。
逃げられた。
沖田は無表情のまま見上げると、山崎が叩き落とした脇差を拾って、
ブンッ
と、高杉めがけて投げた。
高杉は一直線に向かってくる刃先をギリギリのところで除けた。
「!!危なっっっ!!!!アイツも非道だわ!!!ね、高杉さん!!!」
「・・・。」
ギャアギャアと言いながら小さくなっていくヘリコプターには一瞥もくれずに、沖田はに駆け寄った。
はというと、朦朧とする意識なのに山野の鼻をつまんでグイグイしながら怒っていた。
「山野さん・・・!!山・・野さんはっ、バカで・・すか!!わた・・わたしを、庇うなんて!
山崎さんが・・お・・・として・・くれなかったら、死ん・・でたかも・・しれない・・・んですよ・・!!」
「ひひゃい(痛い)ひひゃい(痛い)。」
「おい、こら、、山野の鼻がもげる。」
沖田はの手を山野の鼻から外して、山野をどけた。
ちょっと山野との距離が近すぎて嫌で、まずそれからやった。
の鼻つまみから解放された山野の鼻は真っ赤になっている。
「でもちゃん、山崎さんが助けてくれたでしょ?信頼あってのことだよ。ね?山崎さん。」
「え?オレ、ちゃん助けようと思ってクナイ投げたんだけど。山野君の為じゃない。」
「うそ?たまたま、俺助けられたんスか?あっぶねーーー!!」
「山崎さん・・・ありがと・・・ございました。」
「いーえー。いつでも言って。」
山野が軽くショックを受けている横で、は屋根の上にいる山崎を見上げて笑った。
山崎も屋根にしゃがみ込んで、に向かってニカっと笑った。
沖田は、その様子も面白くないように見ていると、ふと、さっき縛った自分のスカーフが真っ赤に染まっていることに気付いた。
止血に限界がきているみたいだ。
の腕の下の地面をみると、暗闇で気付かなかったが、相当の量の血だまりになっている。
オイオイ、これヤバいんじゃないのかィ?
「!」
「・・・は・・ぃ・・・。」
沖田が壁に寄り掛かって座っているの肩を抱き起こすように引き寄せると、
は首に力が入らないようで、頭がユラユラと揺れ、沖田の肩にポスッと寄り掛かった。
やっぱりだ。血を流しすぎている。
「俺はすぐにをパトカーに乗せて病院に連れてく!山崎は近藤さんと土方さんに報告!」
「はいよ」
「一番隊は引き続き周囲を捜索!不逞浪士一匹たりとも逃がすなよィ!指揮は山野に任せる!以上!開始!」
「「「「「「おぉ!!!!!!」」」」」」
の視界はだんだんと白んできて、やがて暗闇に落ちた。
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高杉さまとの戦闘、終了いたしました。
沖田隊長、鬼すぎるだろ・・・!!!!
高杉さん、路地でまた子のお迎えをまっていたのですね。←
次回で完結する予定です。