ストーカー【stalker】
特定の個人に異常なほど関心を持ち、その人の意思に反してまで
跡を追い続けるもの。
act.14
真選組隊士として働き始めたは、この世界にも真選組にも慣れ始め、快調な生活を送っていた。
今日は非番。
いつもの隊服ではなく、袴姿にポニーテールといったにとっては、ラフな格好でくつろいでいる。
本でも読もうかと立ち上がったの耳に、廊下からドタドタと急ぐような足音が聞こえた。
足音の大きさからして、どうやらこっちに近づいて来るらしい。
の自室の前で音が止まったかと思うと、
スパン!
と、勢いよく襖が開いた。
「うわ!びっくりしたぁ。山崎さん、どうしたんですか?」
いきなり大きな音を立てて開いた襖に、は驚いて振り返ると、そこには息を切らした山崎が立っていた。
顔は前髪に隠れて良く見えない。
「ちゃん!ちょっと一緒に来てほしいところがあるんだけど。」
「いいですよ。今日は非番な…うゎ!」
が了解の返事をするや否や、山崎はの手を掴んで廊下をずんずん歩きだした。
「ありがとう!俺一人じゃ生死に関わるんだ。」
「せ・・・生死ー!?」
山崎に導かれるまま、はパトカーに乗った。
「パトカー初めて乗ります!」と少々はしゃぎ気味のに、山崎はフっと笑みを漏らした。
ブゥン!
と、勢いよくパトカーが発進する。
運転をして、ようやく落ち着いたように見える山崎に、は声をかけた。
「山崎さん、どちらに向かうんですか?」
「あぁゴメン!言ってなかったね。志村妙さんのお宅に行くんだよ。」
「妙さんって近藤さんが、えっと、スト何とかってのをしている?」
「そうそうストーカーをしてる…って、一応局長なんだから!ストーカー呼ばわりはやめよう!」
は数日前に近藤が妙のストーカーをしていると聞かされたばかりだった。
真選組の局長でしかも三十路近いということで、てっきり武州に妻がいるとばかり思っていたは、
近藤がまだ未婚で、しかも、好いている女性を付け回していると聞いたときは、正直開いた口が塞がらなかった。
そんな、近藤が迷惑をかけている女性の家に何故山崎が行かなければならないのだろうか。
しかも、生死に関わるとは、一体どんな事態なのだろうか。
そんなの疑問を感じ取ったのか、山崎は説明し始めた。
「近藤さん今日もお妙さんの家にストーキングしてたらしくて、捕獲されたらしいから迎えに行くんだよ。」
「ほ・・・捕獲ですか。」
「お妙さんにとって近藤さんはゴリラ以下の存在だからね、今日は一体どんな状態になっているのやら。」
「それで生死に関わるというのは?」
「近藤さんのストーキングによる怒りで、毎回迎えに行く俺まで巻き添えを食らうんだよね。もうホントそれが毎回凄まじくて・・・。」
何かを思い出したようにブルブルと身震いをした山崎に、はよっぽど恐ろしい目にあったんだなと,
憐れむような目で山崎を見つめた。
「それで私は仲立ちをすれば良いという訳ですか。」
「女の子が一人いるだけで、違うと思うんだ。きっと。」
「そういうことならば、任せてください!」
「ありがとう。ホント頼りにしてるよ。」
そんな会話をしているうちに、妙の家に到着した。
妙の家はさすが元道場といったところで、大きな門構えをしている。
ピンポーン
と、山崎がインターホンを押した。
が、中からは誰も出てこない。
ピンポーン
と、もう一度インターホンを押してみるが、反応は一切なかった。
「お留守ですかね?」
「いや、お妙さんから直接『早く迎えに来い』って電話があったから、いるはずなんだけど・・・。」
「中入っちゃいます?」
「いやいやいや、不法侵入なんてしたら、後が怖いから!!」
門の前で二人がどうしようかと佇んでいると、背後から間延びしたやる気のない声が聞こえた。
「あれ?山崎クンじゃん。どうした?新八ンちの前で。」
「銀ちゃんそんなの決まってるアル。ストーキングゴリラ迎えに来たアルよ。」
二人が振りかえると、銀時と神楽が立っていた。
「おぉ、アンタ、ドラッグストアの時の嬢ちゃんじゃねェか。」
「あの節は、お世話になりました。」
「真選組の隊士になったんだってなァ。アンタも物好きな。」
「え?コイツが噂の女隊士アルか?貧弱そうアルな。」
と神楽の初対面である。
神楽の失礼な発言にも気付かないくらい、はあるところに気を取られていた。
「も…桃色の髪っ!初めて見ました!綺麗な髪ですね。」
は神楽の髪を一房手に取り、うっとりと見つめた。
「ア・・・アリガトウ。」
神楽は、いきなり髪を褒められて、嬉しいやら恥ずかしいやらで頬を染めた。
はハッと気付き慌てて手を離して謝った。
「す、すみません!初対面の方に挨拶もせず、髪を触ってしまって!私、といいます。」
「神楽アル。歌舞伎町の女王ネ。、よろしくな。」
「はい!よろしくお願いします。」
「嬢ちゃん、神楽なんかに敬語なんて使わなくていいぞ?」
「”なんか”とは何ネ。失礼な。でも、銀ちゃんの言うとおりアル。敬語なんて必要ないネ。」
「そうですか?では、神楽ちゃん、よろしくね。」
と神楽はガッチリと握手をして笑い合った。
そんな光景をのほほんと眺めていた山崎だったが、本来の目的を思い出し銀時に尋ねた。
「万事屋の旦那は、どうしてここに?」
「あァ。新八に呼ばれたんだよ。『僕一人では止められないから銀さん来てくださいー』って。」
「何をです?」
「近藤の処刑だってよ。」
「「しょ・・・処刑!!!??」」
と山崎が青ざめる中、
ぎゃあぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁああぁああぁ!!!!!
と、野太い悲鳴が奥から聞こえた。
「今の声…。」
「近藤さんだね…。」
「裏庭からだ、行くぞ!ゴリラが本当に殺られたかもしれねェ!」
「姐御ォ!今行くアル!!」
4人は裏庭に向かって駈け出した。
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万事屋トリオとヒロインを絡ませたいが為の話始めました。
1話だけのつもりでしたが、長かった!
ちょっとだけ続きます。
お付き合いください。