異世界から来た私が珍しいからなのか。


隊士さんたちの視線が、ものっすごい自分に集中して、正直怖いんです!!




act.5



近藤と土方が部屋から出て行ったあと、は部屋を出たすぐにある縁側に座って空を眺めていた。
空には先ほど近藤達に教えてもらった”ウチュウセン”というものがたくさん飛んでいて、
また、”ターミナル”というらしい高い建物の上の方がピカピカ光っておりとても綺麗で、
は飽きることなく、1刻ほども眺めていた。
すると、誰かこちらに近づいてくる足音が耳に入ったため、はそちらの方向へ目を向けると、
山崎が「やあ。」と手を上げて、が見ていた方向を見て、笑った。



「外の様子が珍しいかい?」
「え?」
「近藤さん達に聞いたよ。君が異世界から来たって。」
「山崎さん、信じてくれたんですか?」
「うーん、さっき話を聞いた時は正直半々だったかな。でも、ずーっと外見てるちゃん見て、ちょっと信じた。」



でも近藤さんは君の話を全部信じてるけどね。と、山崎はにこっと笑って付け足し、の隣に座った。
この話は真選組中に広がっているのだろうか。
まぁ、隠してもしょがないが。



「あ、そうそう。今夜、ちゃんの歓迎会ってことで宴会開くらしいよ。
そこでちゃんを紹介するときに異世界から来たってこと隊士達に言っていいかなって
近藤さんに聞いてくるように言われたんだけど。」
「はい。全然かまいません。」



そこでは、ふとあることに気づいた。



「山崎さんなんですね。私の監視役は。」
「えぇ!?何でわか…!」



山崎は何故わかったのかと言いかけた口を両手で塞いで、冷や汗をかいて目を泳がせた。
その様子が可笑しくて、はくっくっと笑うと話を続けた。



「今夜話す内容の話を、見た目あまり偉そうじゃない山崎さんが事前に知っていたので、
そういう役職の人なんじゃないかと思って。
っていうのは、ほんのちょっと思っただけで、私の元同僚の”山崎”さんが監察だったんです。
だから、あなたも観察なのかなぁと。」



それに私がずっと外を見てたことを知っていたから、もう監視は始まってたんじゃないかって。と、加えると、
山崎は降参という感じに両手をあげて、これじゃあ監察失格だ、と苦笑した。



「そんなことないですよ。監視されてるの気づきませんでしたから。」
「それを聞いて、ちょっと救われたよ。」



山崎は照れたように頭を掻くと、忘れていた任務を思い出して、ばっと顔をの方に向けた。
は何事かと驚いていると、



ちゃん!忘れてた!君を監視しながらタイミングを見て屯所を案内するんだった!」



は任務の内容が敵に全部漏れてますよと突っ込みたかったが、
山崎が立って立って!と急かすので、立ち上がり、山崎の後に続いた。



道場、食堂、風呂、各幹部の部屋などを順番に案内してもらい、は少し安心していた。
ウチュウセンやらターミナルやら”異世界”のものを見たため、この世界の生活はどうなっているのかと
不安になっていたが、の世界の生活とほとんど同じであった。
ただ、この世界では”カラクリ”をたくさん使うらしい。
山崎に見せてもらった”ケイタイデンワ”は、かなり驚いた。”ケイタイデンワ”があれば遠くに離れた人とも会話ができるらしい。
携帯電話を珍しそうに見ているを見て、山崎はが異世界から来たことを改めて実感していた。




夜になり、山崎のお知らせ通り、の歓迎会という名の宴会が開かれた。
近藤がの異世界の話を隊士たちにすると、隊士たちも近藤の言うことならと信じたようだった。
まさか、こうも簡単に受け入れられると思っていなかったは、近藤の人柄なのか、真選組がお人よしなのか、
判断に困ったが、とりあえず悪い状況ではないことが分かったので、それ以上は考えなかった。

しかし、



「みなさん、ものすごくお酒飲みますね。良いんですか?明日の任務とか。」



本当に文字通りどんちゃんどんちゃんお祭り騒ぎだ。二日酔いとか大丈夫なんだろうか…。
は少し心配になり、いつのまにか隣で飲んでいた沖田に尋ねた。



「真選組は皆酒強いからなァ。心配いらねェよ。」



そういう沖田も『鬼嫁』の一升瓶を足で抱えて独り占めしている。
そういえば新撰組も皆酒強かったっけ。でも、沖田先生がお酒飲んでる記憶がない。
横にいる沖田さんは、お酒好きそうだなぁ。



「沖田さんも、お酒お強いんですか?」
「強いかどうかは知らねェが、あそこの土方のヤローみたいに酒に飲まれたことは無ェなァ。」
(その発言、酒がめっちゃ強い人の発言です…!!)



そう思いながら、は沖田の指さす方向を見ると、たしかに。
顔を赤くして訳のわからないことを隣の隊士に永遠と語りかけている土方の姿があった。



「それに、近藤さんみたいに、酒で記憶を飛ばしたこともねェ。」



今度は沖田の視線の先にいる近藤を見ると、彼は素っ裸になってはしゃいでいた。
は見なかったことにしようと、ギギギと沖田の方向に顔を向けた。
近藤さん一回、宴会の次の朝、素っ裸のまま見回りに見回りに行こうとしたんだぜ。と、沖田が付け加えた。
は局長がそんなんで大丈夫なのかと思ったが、隊士たちの顔を見ると、大丈夫なんだろうなと納得できた。



「真選組のみなさん、楽しそうです。」
「近藤さんがいるからなァ。土方がいなくなれば、もっと楽しい。」



土方死ねばいいのになァ。と呟く沖田を見て、は新撰組の副長と沖田先生の関係とは全然違うなと、
でもなんとなく微笑ましく思っていると、沖田に、お前も飲めと酒を勧められた。
お猪口に銀色の液体が注がれる。



は?」
「え?」
「酒。強えェのかィ?」
「うーん…。人並みぐらいですかねぇ。弱くはないんですけど、そんなに強くないです。」
「じゃあ、酒に飲まれるんじゃねェぞ。」



ここじゃお前の周りに酒に酔った狼がいっぱいだ。と沖田はニヤリとわらった。
…たしかに。異世界の話が珍しかったためか、隊士さん達の視線が気になります。



「でも、沖田さんの隣にいれば安心でしょ?」



沖田は一瞬え?という顔をしたが、
だって、沖田さんお酒に飲まれないんでしょう?とが言うと、沖田は「あぁ。」と納得して、またニヤリとわらった。



「お前、真選組に入ったらいいのになァ。」








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スパイ容疑がかかっているヒロインに歓迎会開いちゃいました。
大丈夫か真選組!!