天真爛漫。且つ、単純。
明瞭快活。
精神年齢=見た目より10歳は絶対に幼い
真選組1番隊、副隊長
そして、俺の彼女
「真選組だァァア!!!神妙にお縄につけェェ!!!!」
スピーカーから聞こえる土方さんの声
そんなデカイ声出したら鼓膜が破れまさァ
ったく、わかってないのかねィ。
そう思う心とは裏腹に気持ちが高ぶる
高揚する空気
その周りを取り巻く熱風
そして躍動して騒ぐ血
そして…
「行きますぜィ。」
「言われなくても」
この戦場とは似つかわない華のような笑顔
そんな微笑を浮かべて、彼女は刀を握る
ああ、綺麗だねィ…
『VS 彼女』
真選組、という言葉を聞いただけで
引け腰になっている奴らを相手にする事ほど簡単な事は無かった
恐怖、という文字が張り付いた顔
攘夷志士らが聞いて呆れる
「このガキ…っ!!!」
「真選組一番隊隊長沖田総悟でィ」
切りかかるといとも簡単に陣形を崩しやがった
目の前に見える敵を薙ぎ払っていく
ああ、快感
なんて言わないけれど
だが、そいつらが恐怖に張り付いた顔のまま散っていくさまを見るのは少し滑稽であり、可笑しくもある
そんな中散らない華が、一つ
「ッ…この女の命が惜しくなかったら刀捨てやがれェエエ!!」
「!!!!」
が男の腕の中で刀を切りつけられていた
唯一の女、ということで目をつけたらしい
…こいつら、馬鹿だろうか
ああ、可笑しくて笑いすら出てくる
他の隊員も…ああ、新入りは分からないか
「さん!!」
新入りの隊員が焦って叫ぶ
おっと、あっちが調子に乗り出したな
「おい、新入りィ」
「っは、はい!」
「何焦ってんでィ」
「なに、言ってるんですか!このままじゃさんが!!!」
「あ、新入りくん大丈夫だよ〜」
抗議をするかのように口を開きかけた新入り隊員に向かって
ひらひらと手を振る彼女
攘夷志士の男の腕の中で、満面の笑みで。
「…何やってんだァ、アイツ」
後から突撃してきた土方さんがこの様子を見て呆れたように口を開く
「何って…捕まってしまいやした」
「…で、硬直状態か?」
「やっだなー大丈夫って言ってるじゃないですか土方さん!怒っちゃうぞv」
「…無理してキャラ変えんな。さっさと出て来い」
きゃはっと笑うに突っ込む土方さん。
まるでこの間には緊張感が無い。ま、俺も言えることじゃ無いんですけどねィ
「ッコラてめぇえら!!この女どうなってもいいのか
俺の存在無視してんじゃ…!!」
ドゴォッ!!!!
「っがはぁ…!!!」
「っ!?オイどうした…」
シュパアァ!!!
男の腹を一撃して脱出したが
愛刀の脇差を片手に他の攘夷志士に斬りかかる
ナメてたら痛い目にあうのはこの世の鉄則だが
この女以上にその鉄則がはまる奴は居ないだろう
飛び散る赤の残像
砕けて、消えていく光
その中でまだ咲き誇る、一輪の華
それは、一瞬の出来事
「…女だからってナメんな。ウザイ」
+ + +
彼女は、は強い
それは分かりきっている事実
俺が守らなくても、彼女は十分に生きていけるかも知れない
だけど、
お前さん、どんだけ強くても
どんだけ刀を振り回していても
やっぱり女なんさァ…
分かってるんですかィ?
「今日もお勤めご苦労さんでしたァ!!!」
どっと会場が盛り上がる
宴会の中
近藤さんはでかい獲物をしとめたのが余程嬉しいのか
宴会が始まってまだ1時間足らずなのにもう泥酔気味だ
土方さんでさえそうなのだろう
自分の戦法が上手く行ったのだ、喜ばないはずも無くほろ酔いで呑んでいる
そして
「いっやぁ今日もちゃんは大活躍だったなァ!」
「やっだ近藤さんv誉めても何にも出ませんでばぁ!!」
…も完全に出来上がってる…
(はぁ…)
心の内で小さく溜息を漏らす
は宴会では花形だ
唯一の女隊士、ということもあるし
打ってすぐ反応できるところがまず面白い。
何より、可愛いし。
「それじゃぁもう一丁行きますか!?」
「あ、いいですねぇもっともっと酒持ってこぉーい!!!」
女中にもっとと強請る
いや、可愛いけどさァ
…。
お前さん、まだ未成年だろィ。俺も人の事言えた義理じゃァありやせんが。
ってか俺達が飲んでて誰も注意しないのか。
ロクな大人がいたもんやありやせんね、ココは。
「あ、ちゃんちょっと一杯酌してくれぇ」
「いいですよぉ〜♪皆さん、御苦労様でした!」
にっこにこと部下にまで酌する
…当然、面白いわけがない
だが、そんな俺の心中をが察するわけもなく。
周りが高揚している中、俺だけが一人醒めている
苛つくなァ
「土方さんも、お疲れ様でした♪」
「おう」
に酌してもらう土方さん。
ってか鼻の下伸ばしてんじゃねェよ土方。
明日は特大のバズーガぶっ飛ばしてやろうか。
若干土方に照れが入っているように思えるのは
絶対に俺のに対する色目だけじゃァない
ようやく隊員たちを一回りをしてがにへらにへらと此方へ向かって
どさりと隣に腰を下ろす
「えっへへ〜総悟ォ」
「…何でィ」
「なあんで、そーご、酔ってないのォ?」
きょるんとつきそうな笑みで聞いてくる
普段なら「ブッてんじゃねぇ」と言ってやるとこだが
生憎、コイツは今無意識でやっている
それが犯罪的に似合うんだからもうどうしようもない
「誰のせいだと思ってんですかねィ」
「だぁれ?私?」
自覚、あるんですかィ?
と驚いた顔で見つめると
はそれにも気づかず焦点の合わない目でとろんとこっちを見る
「私のせいじゃ無いでしょぉ〜、ほらもっと飲みなよォ」
酒が、トクトクと注がれる
こんなにも、好きなのに
コイツはどうしてかこんなにも鈍い
「…はにゃ?どったの?」
「…なんでも、ありやせん」
「なぁによぉ…なんで怒ってるのよォ…」
アンタのその鈍さですぜ、お嬢さん
黙っていると、不意に空気がゆらりと揺れた
がゆっくりと言葉を紡ぎだす
「私、何か怒らせるようなこと、した…?」
「…?」
「総悟みたいに頭よくないからぁ…私馬鹿だから、わかんない…」
「……?」
「…もういい」
「何処行くんでィ」
「…厠ッ!!!」
フンと顔を背けて
子供みたいに不貞腐れてがそっぽ向く
拗ねたようだ
もしかしなくても、怒ってるんだろう
(…馬鹿は、俺か)
こんなときに女一人の扱い方も知らない、ガキ
がすたすたと部屋を縦断し、するりと抜けた
部屋は宴会ムードが最高潮で誰も気づかない
俺だけが、醒めている
「…ハハ、ホント馬鹿でィ…」
酒を、ぐいと飲み干した
+ + +
「遅ェ…」
が立って厠へ行ってからもう30分は経った
腹を壊したのだろうか。
飲みすぎて吐いているのかもしれない
たった30分
されど30分
たったコレだけの時間、目に付かないだけで不安になる
自分でもあほらしいと思う
放っとけば良いのにと思う反面、やっぱり無理だと思う自分は彼女に相当依存しているのだろう
「馬鹿は、馬鹿なりに考えるって事もあるってことかねィ」
一人、誰知れず呟いて立ち上がる
少し月を仰いで屯所内の廊下を歩く
随分冷え込んでいる
腹を壊しても仕方の無い話なのかもしれない。
(……?)
厠に行ってから人の気配が誰もしないことに気づく
いくら酔いの気に当たったとて、人の気配くらいはさすがに気づくはずだ
「…?どこですかィ」
返事がしない
問いは静かさに溶け込んで反響すらしない
心臓がざわりとざわめいた
すっと頭に上っていた熱が急激に下がる
いやな、予感がする
「!」
返事は、無い
「…っ」
屯所内じゃないのか?
いや…
まだ見回りきれて居ないところもある。決め付けるには、早い
「・・・・・・」
耳を澄ますと微かに動く気配がした
男の声と…
『っ・・・や』
女の、声
その方角へと全力で向かう
普段あれだけ動いても息切れしないのに今は動悸が激しい
(…っ!)
ある廊下の一角からその声は聞こえた
宴会所からは遠く離れた場所
丁度、ここからだと死角になっている
が、声は丸聞こえだ
「君の事がずっと好きだったんだちゃん…」
「や、だ、はなしてください…っ!!」
「可愛くて、強くて…君に憧れて僕は真選組に入ったといっても過言じゃない」
「そんな、不純な動機で…っ真選組を馬鹿にしないで!!」
「馬鹿なもんか、君が好きだよちゃん…」
の細い手首をつかんで男が寄っている
どっかの隊の新入り隊員だろう
いつもなら全力で抵抗するはずのが、今日に限って弱弱しい。
薬でも嗅がされたのかもしれない
怒りが沸々とわいてくる
「いい加減にしてくださ、い…」
「ほら、ここなら誰も来ないだろう」
「いや…ぁ、総悟ぉっ!!!!!」
ドカッ!!!!!
脇に差していた刀の柄で隊員の頭を殴った
男がそのままどさりと倒れる
「そー…ご…?」
「何でィ」
「どうして…」
「アンタが呼んだんだろィ」
涙目で息を切らせてが見つめてくる
そんな弱弱しいを見てなぜかに向けても怒りが募る
「ごめん・・・なさい」
「ゴメンで済んだら警察はいらないらしいぜィ」
「…はい…」
「何でもっと抵抗しなかった?」
ビクンとが肩を跳ねらせる
唇を噛んで、俯く
「薬、嗅がされて…力が、出なくて…」
「…それで?」
「騒いだら、近藤さんに迷惑かけるし…っ、だから…」
「だから、あの隊員を倒せなかったって言うんですかぃ…」
ああ、この女は
隊員がもしを強姦したならば
それは切腹ものだろう
は、それをさせたくなかった。だから力が出なかったのか
馬鹿だ、
馬鹿な、女
だが俺はもっと馬鹿だ
自覚が有る所が、もう救いようも無い
「」
「…はい」
「俺、怒ってまさァ」
「…うん」
「は、強い。そんなの…とっくの昔に知ってまさ。
だけどどんなに強くてもやっぱり女で。
女であるからにはやっぱり力の差はどうしようも出来はしないのに。
どうして、どうして…」
今までの思いを吐き出すように
腹の中の物を搾り出すようにを見つめる
「…どうして、もっと俺を頼らないんですかィ…?」
「総、悟…」
「俺は、そんなに頼りないですかィ、」
「今日のは、不可抗力で、」
「俺は、そんなに無力ですかィ」
「違っ…」
「俺は」
俺は
「ただを守ってやりたいだけなのにさァ…っ」
馬鹿な、俺
の顔が、悲痛とも取れる顔でで歪む
だけどそんな自分を許さないように、ゆっくり微笑む
それから、そっと俺の肩に手を回した
普段そんな素振りも行動もしない彼女なだけに
この状況であっても俺の心臓はドクリと脈を打つ
そしてぽつりとが俺の耳に吹き込むように呟いた
「…私が戦う前、どこを見ているか知ってる?」
の瞳を見つめる
瞳の奥が柔らかい。
「総悟の、背中見てるんだよ」
瞳の奥が、静かに揺れた
「総悟の背中見てるだけで、安心する。
それだけで、私は強くなれる。
ああ、大丈夫だなって、思えるから。
総悟が手を繋いでくれるだけで一人じゃないって分かるから。
総悟は、私をいつも孤独から守ってくれる」
これだけじゃ、駄目?
そう言って笑った彼女は
戦闘の時とは違う華を咲かせて笑う
(綺麗だ)
そして、この表情をさせているのは自分なのだと…
胸の奥が熱くなる
「それだけじゃ、足りやせん」
へ?とがぽかんと首を傾げる
刹那、
柔らかい唇を塞いだ
桜色の、の唇
何度も貪るように口づけるとは小さく息を漏らす
何度味わっても堪らない
「…キスされたら、どんな感じがしやすかィ?」
「…総悟からの愛を、感じる、かな」
真っ赤な顔をしたまま、
だけど不敵に笑った彼女
俺は、一生勝てない
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Black
clover のライムさまから、総悟 相互記念夢をいただきました!
強いのに可愛いヒロイン、そして振り回される沖田くん。キュンキュンします!
ご飯3杯はいけます!(何)
『隊士ヒロインで』という無茶なお願いにも快く受けてくださり、
ありがとうございまァァァす!!(ジャンピング土下座)